炭素税とは

炭素税とは、CO2などの温室効果ガス排出の要因となる化石燃料の使用に対して、炭素含有量に応じて課せられる税金のことです。

石油や石炭、天然ガスといった化石燃料には炭素が含まれていて、燃焼することで二酸化炭素などの温室効果ガスを排出します。

CO2排出量1トンあたりの税率を定めて炭素税を導入することによって化石燃料の使用削減を促し、温室効果ガス排出量削減につなげる狙いがあります。

炭素税は、カーボンプライシングの価格的なアプローチです。

CO2に価格をつけ、排出量に応じて企業や個人にコストを負担させるカーボンプライシングには、価格と数量という2つのアプローチがあります。

炭素税は価格アプローチであり、政府により炭素税の税率として設定された価格を基準に排出コストを算出するものです。

一方、数量アプローチには排出量取引制度があります。

参照)カーボンプライシング排出量取引制度

日本におけ炭素税の導入は未だ検討段階にあります。

現在、日本では「炭素税」は導入されていません。

後述の通り、環境税としては地球温暖化対策税が2012年から導入されていますが、諸外国で導入されているような本格的な炭素税はまだ検討段階と言えます。

導入している国としては、フィンランドやオランダ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、ドイツ、イタリア、イギリス、スイスです。 米国では自治体レベルの導入が先行しています。

なお、課税段階については大きく次の3つがあり、海外での導入事例においても適用されるパターンは様々です。

日本では炭素税導入に対する各産業界からの反発もあり、慎重な議論が求められています。

  1. 化石燃料の採取・輸入時(上流)
  2. 石油精製所や都市ガス製造所、発電所からの出荷時(中流)
  3. ガソリン・ガス・電気などの工場、オフィスビル、家庭への供給時(下流)

日本が炭素税を導入するメリット・デメリットは次の通りです。

炭素税のメリットは以下の3つが考えられます。

  1. 温室効果ガス排出に伴う社会的コストの可視化
  2. 温室効果ガス排出量の削減
  3. 再生可能エネルギーの普及拡大

一方、デメリットは以下の3つが考えられます。

  1. 企業・個人のコスト負担増加
  2. 規制が緩い国への産業移転
  3. 企業の負担増加に伴う国際競争力の低下

地球温暖化対策税と炭素税の違いとは

エネルギー起源のCO2排出抑制のために、2012年から導入されたのが地球温暖化対策税(以下、温対税)です。

石油石炭税に上乗せする形で、CO2排出量に応じた税率が加算されています。

温対税は炭素税の一部だという見方もありますが、税率が諸外国の水準よりも大幅に低いことや、税収入の使途がエネルギー対策などに限られていることから、本格的な「炭素税」とは言えないという見方が一般的です。

温室効果ガスの排出規制が緩い国から安価な製品が他国に輸出される状況は、地球全体の気候変動対策のネックとなります。

輸入関税に国境炭素税を上乗せすることにより、内外格差の解消と税収の増加を狙うことができます。

EUでは、2020年7月の首脳会議で中期予算案に国境炭素税を導入する意向が示されました。

対象製品によっては日本の輸出業にも影響が出るため、動向を注視する必要があると言えるでしょう。

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