カーボン・オフセットとは

カーボン・オフセットとは、温室効果ガスの排出量を相殺する考え方です。

企業や個人が排出する温室効果ガス量について、自ら減らす努力をしても、減らしきれない排出量を、代わりにどこか別の場所での削減・吸収に貢献することで、オフセット(相殺)をすることを言います。

別の場所とは、例えば、植林・森林保護や再生可能エネルギー事業などクレジット(削減・吸収量)に投資をするなどの方法があります。

カーボン・オフセットには、「クレジット」という考え方が使われます。

クレジットとは、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の良い機器の導入、あるいは植林などで実現できた温室効果ガスの削減・吸収量を、市場で取引ができるように定量化した数値です。

このクレジットを購入することでカーボン・オフセットをすることができます。

カーボン・オフセットは、クレジットを活用することで誰でも実施できる仕組みであり、自らの削減以上に更なる温室効果ガス削減を進めることができる社会貢献活動でもあります。

近年では、パリ協定やカーボン・ニュートラルの流れで、地球温暖化への取り組みの必要性と緊急性が高まっており、企業がどうしても自らの排出を削減できないときに埋め合わせができる効果的な取り組み方法の一つとしてカーボン・オフセットへの関心が高まっています。

なお、日本国内の有名なカーボン・オフセットの制度としては、J-クレジット制度があげられます。

カーボン・オフセットの仕組みは大きく4段階に分かれます。

  1. 自らの行動に伴う温室効果ガスの排出量を認識する
  2. 市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等によって排出量を減らす取組を行う
  3. 1、2によっても避けられない排出量の把握する
  4. 上記3の排出量の全部又は一部を他の場所における排出削減量・吸収量(クレジット)によってオフセットする

カーボン・オフセットの種類は5種類に大別されます。

1.オフセット商品・サービス

商品を製造・販売する者やサービスを提供する者などが、商品やサービスのライフサイクルを通じて排出される温室効果ガス排出量を埋め合わせる取り組みです。

2.会議・イベントのオフセット

国際会議やスポーツ大会などのイベントの主催者等が、その開催によって排出される温室効果ガス排出量を埋め合わせる取り組みです。

3.クレジット付商品・サービス

商品・サービスやイベントのチケットにクレジットを付けて、購入者や来場者などの日常生活に伴う温室効果ガス排出量の埋め合わせを支援する取り組みです。

4.寄付型オフセット

クレジットの活用による地球温暖化防止活動への貢献・資金提供等を目的として参加者を募り、クレジットを購入・無効化する取り組みです。

5. 自己活動(組織活動)オフセット

自らの活動、例えば企業の事業活動や個人の電気やガスの使用に伴って排出される温室効果ガス排出量を埋め合わせる取り組みです。

カーボン・オフセットと排出権取引制度の違いは次の通りです。

温室効果ガスの排出量を他との取引によって埋め合わせるという点で、カーボン・オフセットは、国家間や企業間で行われる排出量取引制度と似ています。

しかし、カーボン・オフセットと排出量取引は、自主的なものか、義務的なものであるかという点で異なります。

カーボン・オフセットは、他者から決まりを設けられていない状況で、排出削減への責任感などから、クレジット購入などを通じて自主的に責任を果たそうという取り組みです。

一方で、排出量取引制度では、国や企業は何らかの排出規制をかけられており、義務であるその規制をクリアするために、排出枠を使うことを指します。

カーボン・オフセットに取り組む際、まずはできる限り自らの温室効果ガス排出量を削減する努力をしなければなりません。

オフセットをすることで自身の排出が許容されるのではありません。

第一に可能な限り、自らの排出量を少なくすること、それでも削減できない排出量をカーボンオフセットで埋め合わせるという考えがとても重要です。

カーボン・オフセットは、地球温暖化を食い止めるための方法のひとつとして注目され、各国で行われていますが、企業がビジネスモデルを変えないことや、厳格な地球温暖化対策を行わない姿勢を守ることになっているのでは、という批判の声もあります。

たしかに、カーボン・オフセットには、お金によってほかの場所からクレジットを購入して、温室効果ガスの排出量を相殺できるので、ビジネスモデルを変えないことなどの態度を肯定してしまう側面もあります。

一方で、温室効果ガスの排出量を減らすということは、重要であることは間違いありません。

排出量を削減していくためには、カーボン・オフセットは積極的な排出削減をしないことを正当化するためにあるのでなく、削減努力を自らで最大限行ったうえでの最後の手段として利用されるべきとの認識が重要となります。


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