サプライチェーン排出量開示の意義・開示方法・先行/先進的事例

更新日:8月13日

最終更新日:2021年8月9日


 サプライチェーン排出量の算定・削減に関する企業の取組の重要性が高まっています。

 そのような状況で、自社のサプライチェーン排出量算定・削減の取組を、適切にステークホルダーに伝えることは、TCFD提言やCDP質問書回答等で求められる気候変動リスクの開示にも直結するため、非常に重要となっております。


 この記事は、「サプライチェーン排出量の削減に対する取組を効果的に開示したい」「自社の気候変動リスクの開示を適切にしたい」という企業のIRやサステナビリティ/CSR推進部署のご担当者様に向けて、執筆いたしました。

※サプライチェーン排出量の削減に関する詳細は、こちらをご参照ください。


以下、具体的なサプライチェーン排出量の開示の考え方や、企業における取組事例をご紹介いたします。


目次

  1. サプライチェーン排出量削減への取組を開示する意義(気候変動リスクを開示する意義)

  2. サプライチェーン排出量開示の考え方

  3. 日本企業における開示の現状

  4. 説得力のあるストーリー構築の有効性

  5. サプライチェーン排出量開示の方法

  6. 開示に関する先行・先進的事例

  7. まとめ


1.サプライチェーン排出量削減への取組を開示する意義(気候変動リスクを開示する意義)

 TCFD提言などをはじめ、企業における気候変動リスクに関する開示への要請が高まる中、サプライチェーン排出量の算定・削減に対する取組をステークホルダーに適切に伝える重要性が高まっています。

 そのような事業環境の中で、サプライチェーン排出量に関連する情報開示を行う経営上の意義は、以下の3点を確かなものとし自社の評価を高め、企業価値を向上させることです。


  1. 社会要請への対応:気候変動リスクを情報開示し、脱炭素に関連する法令や社会的なルールに、適切に対応できる

  2. 優位性を構築:脱炭素のために既存事業を見直し、自社の競争力を強化できる

  3. 新たな機会の獲得:脱炭素社会への転換によって生まれる新たなチャンスをつかみ取り、自社のビジネスを拡大する


 自社において、サプライチェーン排出量の算定・削減に関する取組が行われている場合でも、ステークホルダーに対し適切に情報開示・コミュニュケーションが行われなければ、適切な評価を受けることができません。

 したがって、上記1〜3を確かなものとするためには、サプライチェーン排出量に関連する情報を含む気候変動リスクに関する情報を適切に開示することが、企業価値向上の重要な鍵となります。


 削減の取組と情報開示が適切に行われれば、具体的には、ESG投資の呼び込み、脱炭素を意識する顧客の確保、脱炭素に関わる新規事業の開拓に繋がるなど様々な効果を見込むことができます。

 


2.サプライチェーン排出量の開示の考え方

 サプライチェーン排出量に関連する取組を適切に開示するには、説得力のあるストーリーを構築することが重要です。


■日本企業における開示の現状

 日本では、大企業を中心に統合報告書を発行する割合が、グローバルで見ても非常に高くなっています。しかし、環境指標などの非財務情報に関するデータを豊富に開示する一方で、データが何を示唆するのかまで伝えられていないと指摘されるケースも多いと言われています。

 細かいデータを開示する前提として、「なぜその取組をおこなっているのか」「どの程度の成果があったのか」「経営にとってどのようなメリットがあるのか」などの全体感を伝えられなければ、取組自体が過小評価される可能性があります。


■説得力のあるストーリー構築の有効性

 自社の取組をステークホルダーに適切に理解してもらうには、脱炭素への取組を首尾一貫したストーリーとして語ることが有効になります。

 以下で、ストーリー構成の一例をご紹介いたします。


<説得力ある脱炭素の実現による成長ストーリーの構成例>

(1) 自社のパーパス、ビジョン、ミッション

(2) 戦略

(3) 取り組むべき重要な課題(マテリアリティ)の特定

(4) 具体的な削減施策

(5) 取り組み成果(非財務情報)

(6) 財務面への効果


 自社の存在意義・役割(パーパス)から始まり、その実現戦略を提示し、その戦略に沿った取り組むべき重要な課題(マテリアリティ)として気候変動対策があり、その実現手段として具体的な削減対策があります。削減対策の成果は非財務情報として定量的なKPIで計測し、その成果の財務面への効果を数値で表します。

 この一連の流れを、理解しやすいシンプルなストーリーとして語れると、自社の脱炭素経営の有効性を、ステークホルダーに対して、適切に伝えることができます。



3.サプライチェーン排出量開示の方法

 軸となるストーリーは、コミュニケーションの相手を問わず共通であるべきですが、強調すべきポイントや伝え方は相手により最適化する必要があります。

 主なステークホルダーに対して伝えるべきポイントの例は以下の通りです。


<主なステークホルダーに対する、伝えるべきポイントの例>

  • 対投資家:サプライチェーン排出量削減がいかにして成長につながるか

  • 対BtoB顧客:サプライチェーン排出量削減により、自社の製品、サービスがいかに優れたものになっているか

  • 対BtoC消費者:自社製品・サービスを購入することにより、いかに消費者が社会的貢献できるか

  • 対政府、NPO:自社はいかに気候変動対策の役割を果たしているか


 上記の各社外ステークホルダーとのコミュニュケーションを適切なものにしていくために重要となるチェックリストを、以下でご紹介します。


<コミュニュケーション改善のためのチェック項目例>

(1) 重要なステークホルダーを特定できており、各ステークホルダーの関心事項に対応しているか

(2) 自社内のみならず、サプライチェーン全体の情報を報告しているか

(3) 目標、取り組み内容、成果など、定量的に表現しているか

(4) 具体的な取り組み内容を記載しているか(例:事例紹介、現場の声など)

(5) 自社にとって不利な内容についても誠実に説明しているか

(6) 継続的にコミュニケーションして、進捗が明確になっているか

(7) ステークホルダーからのフィードバックを受けて、継続的に改善しているか


4.開示に関する先行事例

 通信機器メーカーであるCiscoは、長期的な企業価値向上のために、開示を通してステークホルダーとの連携を重視しています。同社を取り巻くステークホルダーごとに、コミュニュケーション手段を使い分けており、同社の脱炭素への取組を適切に訴求しています。

 具体的な手段としては、各種説明会の開催(オンライン・オフライン)だけではなく、顧客企業間の連携を促すイベントや、同社の実際の取組見学会、ステークホルダーの意向調査、外部組織への取組参加など多岐に渡ります。


<各ステークホルダーとのコミュニュケーション手段例>

  • 対顧客

グローバル顧客諮問委員会、Ciscoライブ・結束イベント、顧客満足度調査、パートナーサミット、パートナー教育コネクション、オンラインコミュニティフォーラム

  • 対投資家(株主)

株主総会、会社説明会、正式な会議、販売説明会、技術についてのトークセッション型イベント、バスツアー

  • 対政府、NGO、経済界

Cisco基金、Ciscoネットワーク作りのためのアカデミー、事業者団体、WEF(世界経済フォーラム)、技術政策ブログ、啓蒙活動、ソーシャルメディアチャネル

  • 対従業員

毎月行われる“Cisco Beat”、全体会議、部門・リージョン会議、四半期ごとに行われるリーダーシップオンライン会議・リーダーDayオンライン会議、“私たちのCisco”オンラインコミュニティ、インクルージョン&コラボレーション、コミュニティ作り、25以上のダイバーシティ従業員グループ



5.まとめ

 ESGやSDGsといった文脈の中で、サプライチェーン排出量に関する注目が今後ますます高まることが想定され、サプライチェーン排出量削減への取組(気候変動対策への取組)を適切に開示・コミュニュケーションすることは、経営視点でも重要となります。

 本記事でもご紹介させて頂いた通り、サプライチェーン排出量を含む気候変動リスクの開示には、説得力のあるストーリーを、各ステークホルダーに対し適切な伝え方を行うことが重要です。


 本記事が、脱炭素経営・カーボンニュートラルを目指される皆様の業務の参考になれば幸いです。

 また、弊社では、TCFD開示対応等のサプライチェーン排出量開示に関するコンサルティングをはじめ、サプライチェーン排出量自動算定ソフトウェア(Scope1, Scope2, Scope3)の提供など脱炭素経営の実現に貢献しうるサービスを提供しておりますので、お気軽にお問合せください。




(参考)環境省ホームページ